アスベストの定量分析について詳... ｜スマイル解体@札幌

「アスベストの定量分析（定量測定）」とは、建材や試料中にどのくらいの量のアスベストが含まれているか（含有率）を数値で評価するための分析手法です。
これは、アスベスト含有建材の特定・法的判断・除去工事の必要性を判断するうえで非常に重要です。

以下では、専門家・行政基準に基づいた形で詳しく解説します。

🧱 1. アスベスト定量分析とは

● 目的

アスベスト含有率（重量％）を測定して、試料が「アスベスト含有建材」に該当するかどうかを判断します。

● 法的判断基準

建材中に アスベストを0.1重量％を超えて含む 場合、
→ 「アスベスト含有建材」とされ、各種法令（石綿障害予防規則、大気汚染防止法など）の対象になります。

🔬 2. 定量分析の主な手法

定量分析は、一般的に次の3段階構成で行われます。

【ステップ1】外観・実体観察（スクリーニング）

試料の種類・構造・層構成を確認。

「吹付け材」「ボード材」「スレート板」などの区分を行う。

必要に応じて試料を複数箇所から採取。

→ ここでは定量値は出ませんが、後の分析の方針を決める大切な工程です。

【ステップ2】定性分析（アスベストの有無と種類を確認）

主に次の分析法が使われます：

【ステップ3】定量分析（含有率を算出）

① X線回折法（XRD法）【JIS A 1481-1】

標準試料との比較によりアスベストの重量％を算出します。

主流の定量法。

各アスベスト種（クリソタイル、クロシドライト、アモサイトなど）ごとに測定。

② 示差熱分析法（DTA/TG法）【JIS A 1481-2】

加熱しながら重量変化を測定し、アスベストの脱水反応ピークから含有量を推定。

セメントなど他成分が多い試料にも有効。

③ 電子顕微鏡法（SEMまたはTEM）＋EDS分析【JIS A 1481-3】

微量アスベスト（0.1％未満）や混合試料・繊維状確認が困難な試料に有効。

形状・元素組成（Mg, Si, Feなど）を同定し、含有率を推定。

⚗️ 3. 分析の実際の流れ（例：建材の場合）

サンプリング

建材の代表箇所から数グラム採取（安全対策下で）。

前処理

乾燥・粉砕・均質化。

定性分析（PLMまたはXRD）

アスベストの有無と種類を確認。

定量分析（XRD, TG/DTA, SEM等）

含有率を算出。

報告書作成

含有率（％）、種類、分析手法、試料情報、担当分析者などを明記。

🧪 4. 分析基準と規格

日本では、以下のJIS規格が分析の基準となっています。

【JIS A 1481-1:2021】

建材中のアスベスト定量分析（XRD法）

主流の定量手法

【JIS A 1481-2:2021】

建材中のアスベスト定量分析（DTA/TG法）

熱分析法

【JIS A 1481-3:2021】

建材中のアスベスト定量分析（電子顕微鏡法）

微量分析用

【JIS A 1481-4:2021】

試料採取および試験室間精度評価

サンプリング手順規定

🧰 5. 分析機関の指定と精度管理

環境省・厚生労働省の通知により、**専門の分析機関（ISO/IEC17025認定など）**で実施が推奨されています。

「建築物石綿含有建材調査者」や「石綿分析技術評価事業（AIST認定）」に登録されている機関が信頼性が高いです。

📊 6. 分析結果の読み方（例）
試料名 アスベスト種類 含有率（wt%） 判定
天井材A クリソタイル（白石綿） 3.5% 含有建材（規制対象）
スレート板B 検出せず <0.1% 非含有建材（規制対象外）
⚠️ 7. 注意点・トラブル例

層構造建材では層ごとに分析しないと誤判定の恐れ。

セメント系建材ではアスベストのピークが他成分に隠れることがある。

粉砕不十分・湿潤状態だと定量精度が低下。

定性で検出されなくても、微量含有の可能性がある場合はSEMで再分析が推奨。

🏛️ 8. 関連法令での位置づけ

石綿障害予防規則第3条（事前調査）：
建材中のアスベスト含有の有無を「分析で確認」することが義務。

大気汚染防止法第18条の15：
アスベスト含有建材の判断には、JIS A 1481による分析を用いること。